米国法人税申告の特徴



アメリカでは、法人税の申告といっても、連邦(Federal)、州(State)、ローカル(郡や市)などの各税務当局に、各々異なった様式の申告書を提出する必要があります。アメリカには50の州があり、そのほとんどの州が法人税を課しています。複数の州において事業を行っている法人は、各州に異なる様式の申告書をそれぞれ提出しなければなりません。さらに、多くの郡や市に申告する必要がある場合は、申告書の数が200~300と膨大な数になります。申告が必要であるか否かは、連邦法人税、州法人税共に恒久的施設 (Permanent Establishment=PE)や州按分要素 (State Apportionment Factor) の有無を考慮して、正しい手順で判断する必要があります。


連邦税の申告期日には定められた規定があります。連邦法人税は、課税年度が終了してから4ヶ月目の15日となっています。例えば、暦年度(Calendar Year 12月31日が年度末)が課税年度末の法人は、4月15日が期日です。また、会計年度(Fiscal Year)を課税年度に採用している法人で、3月31日が課税年度末となる法人では、7月15日が申告期日となります。


各州法人税の申告期日は、各州の税法で定められていて、連邦法人税と同じ申告期日の州がある一方、異なった申告期日の州もあります。申告の期日は延長することが可能で、連邦法人税の場合は、延長申請書を申告期日までに提出して必要な納付税額を納めると、6ヶ月の延長が認められます。各州や各ローカル税務当局も同様の延長申請を受け付けており、6ヶ月前後の延長が可能となっています。数多くの申告書作成が必要な法人の中には、正確な申告書を作成するために、毎年延長申請を提出するところも少なくありません。


米国法人税申告書の申告方法は、印刷された申告書を税務当局に送付するという従来の方法に加え、最近では、税務当局のウェブサイトにアクセスして、申告内容をデータ入力して申告する方法も増えてきました。ある一定の要件に該当する法人は、イーファイリング(E-Filing)と呼ばれる新しい方法での申告が義務付けられています。連邦法人税やいくつかの州法人税の申告では、イーファイリングが既に採用されていて、コンピューターやインターネットの発達に伴って、益々増えてくると予想されています。申告書を作成する際には、最新の申告書様式と様式説明書を使用する必要があります。連邦税の様式(IRS公式サイト)各州の様式(各州公式サイトのリンク)は各税務当局がウェブサイトを準備していて、PDFファイルでダウンロードが可能となっています。


米国法人税申告書は、会計事務所や企業においては、申告書作成用ソフトウェアーやシステムを使用して作成されている場合がほとんどです。データを入力すると申告書様式に必要事項が出力されて印刷できるしくみになっていて、効率よく申告書を作成できます。ソフトウェーアーやシステムは、業者が毎年、最新の申告書様式に合わせて更新しており、課税所得計算や税額計算を最新の税法や税率をもとに自動的に行います。


上記は一般的な概略で、米国法人税申告に関する詳細に関しては、「アメリカ法人税実務マニュアル(米国法人税申告書の書き方)」をご参照ください。





アメリカでの法人税納付



米国法人税の納付は、ある一定の納付税額を超えると、予定納税での納付が必要になり、通常は四半期ごとの納付です。課税年度の4、6、9、12ヶ月目の15日が、連邦税の納付期日となります。例えば、暦年度(Calendar Year 12月31日が年度末)が課税年度末の法人は、4月15日、6月15日、9月15日、12月15日が各四半期ごとの期日になります。各州法人税の納付期日は、各州税法によって定められていて各々異なります。


連邦法人税の納付方法は、電信連邦納付システム(Electronic Federal Deposit System=EFTPS)によって、電話またはウェブサイト経由でデータ入力を行い、事前登録した金融機関口座から自動引き落とし(ACH Debit)で納付します。また、各州法人税の納付方法は、納付書に小切手を同封して各州税務当局に郵送する方法と、連邦法人税と同じように、電話またはウェブサイトによる電信残高振替(Electronic Fund Transfer=EFT)と呼ばれる自動引き落としの処理を行って納付する方法があります。


予定納税額の計算方法は、法人の規模や形態によって異なります。連邦法人税予定納税額の計算方法は、内国歳入法により規定されており、決まった手順を踏んで計算します。万一、正しい手順を踏まずに過少納付となった場合は、罰金や延滞利息の支払いとなるので注意を怠れません。各州の予定納税は、連邦税の予定納税の計算方法と異なります。各州の税法を確認して、正しく計算する必要があります。


各州も含めた具体的な納付額計算方法の解説や予定納税計算シートの見本、さらに納付方法の詳細に関しては、「アメリカ法人税実務マニュアル(米国法人税申告書の書き方)」をご参照ください。





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米国法人税申告書の作成手順



米国法人税申告書を作成する際には、ある程度決まった手順を踏んで進めますないと、無駄な時間を費やしたり、不正確な申告書を作成してしまう可能性も否めません。通常、標準的なステップは次のようになります。


1.連邦法人税申告上の課税所得の計算や申告に必要な情報をまとめるためのワークペーパーの作成

2.連邦法人税申告書の作成

3.州税申告上の州按分率や外形標準等の計算とワークペーパーの作成

4.州法人税申告書の作成


上記のステップ1では、連邦法人税申告上の課税所得を計算すると同時に、その他申告に必要な情報書類をワークペーパー(ワークシート)サポート書類としてバインダー等にまとめます。各州税申告書上の税額計算の際には、ほとんどの州において、連邦税上の課税所得が、ベースになってくるため、最初にこれを求めます。連邦法人税の税額及び州法人税の税額計算は、システムやソフトウェアーが自動的に行う場合がほとんどで、ワークペーパー上での計算は行いません。財務諸表上の損益と税務上の加減算修正について、その詳細をサポート書類としてまとめます。税務上の加減算項目には、税務上減価償却費の計算など時間を要する項目から、損金不参入貸倒引当金などのような財務諸表から比較的簡単にみつけられる項目まであります。その他の申告に必要な情報としては、外国関連会社間取引等の、法人税申告書に添付する必要のある情報が挙げられます。ワークペーパーは後日、税務調査の際にも計算根拠資料として提出が必要になるもので、とても重要です。


上記ステップ2では、申告書作成用ソフトウェアーまたはシステムにデータ入力を行い、実際に申告書様式を作成します。この際には、ステップ1で作成したワークペーパーと照合して、正確に数字が反映されているかを検証します。また、このステップまでに誤りがあった場合には後のステップに影響が出るため、十分な確認が欠かせません。


ステップ3では、州法人税の申告書作成に必要な計算根拠をワークペーパーにまとめます。州按分率の計算や外形標準の計算等が、これに該当します。概略的な理論は「州法人税の税額計算」の箇所をご参照ください。


ステップ4では、ステップ3でまとめられたデータを申告書作成ソフトウェア-またはシステムに入力して申告書を作成します。実際に印刷された様式を検証することにより、正確にデータが反映されているかについて確認します。 ワークペーパーの実物見本やその計算理論の解説、さらに税法の解説などの詳細に関しては、アメリカ法人税実務マニュアル(米国法人税申告書の書き方)をご参照ください。





州法人税の税額計算



州法人税は、各州の税法によって規定されているため、税額計算、税率、その他様々な内容が各州により異なります。多くの州では、法人の所得をベースにした税額計算を採用しているところが多いですが、主に、次のようなベースの税額計算があります。


1.所得ベース

2.代替(所得)ベース

3.資産ベース

4.資本ベース

5.ミニマム(最少額)ベース


上記項目2の代替ベースとは、連邦法人税と同じように、所得額に修正計上をする修正所得ベースです。州税務当局の中には、上記項目3や4のように、法人の資本の額や資産の額をベースにして課税する外形標準課税を行うところもあります。その際には、課税所得上の税額と外形標準課税額を比較して最終税額を決定することが多く、複雑な計算が必要になります。ただし、計算自体は申告書作成システムやソフトウェアーが自動的に行うため、データが正しく入力されているかを検証することが、もっぱら税務担当者の主な仕事となります。項目5は、所得がない法人でも一定の最少税額を納付する必要があるもので、他のベースの税額と比較して最少税額が大きい場合の最終納付税額となり、多くの州で採用されています。


州法人税所得ベースの概略算式は次のとおりとなります。


(連邦税上の課税所得)×(各州の按分配賦率)×(各州税率)≒ 各州税額


上記算式における課税所得は米国内源泉の所得で、連邦法人税申告書上の課税所得となります。按分率(配賦率)とは、法人が複数の州において事業を行っている場合に、課税所得のうち各州に起因する所得に関して、売上受取、報酬支払、固定資産の3要因によって、按分する際の率のことで、下記の算式で計算されます。


A(州売上÷全米売上)+B(州報酬支払÷全米報酬支払)+C(州固定資産÷全米固定資産)≒ D州按分配賦率


但し、この按分率も各州によって計算のしかたが異なります。よって、各州の取扱いを確認する必要があります。例えば、上記の算式をそのまま使用する3要素(3 Factor)計算法を採用しているところもあれば、売上だけを2倍する4要素計算法を採用していることころもあります。また、報酬要素や固定資産要素を考慮せず、売上要素だけを考慮する単要素計算法もあります。


単要素計算法 A ≒ D

3要素計算法 [A + B + C] ÷ 4 ≒ D

4要素計算法 [(2 × A)+ B + C] ÷ 4 ≒ D


上記各要素計算法の比較により、各州の税負担も異なってきます。申告書作成システムやソフトウェアーに入力するためのデータは、各要素別に州税ワークペーパーにして保管しておく必要があります。


税率は各州が独自に設定していて、毎年、見直しがあります。申告書作成システムやソフトウェアーは、最新の税率を反映したものとなっていますが、申告書作成の際には、きっちりと検証しないといけません。


ワークペーパーの実物見本やその計算理論の解説などの詳細に関しては、「アメリカ法人税実務マニュアル(米国法人税申告書の書き方)」をご参照ください。





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その他のアメリカ法人税実務



米国法人税実務は、法人税申告書の作成業務だけではありません。例えば、各税務当局からの税務調査に対する対応や移転価格税制に対する準拠、法人の源泉徴収税に関する申告などは重要な業務となります。


米国の税務当局による税務調査は、内国歳入庁(Internal Revenue Service=IRS)をはじめ、各州及びローカル税務当局により、とり行われます。通知書による情報書類依頼(Information Documentation Request)、調査官とのミーティング、査定(Assessment)と更正通知という一連の流れがありますが、それぞれの段階で留意しないといけない点が多々あります。税務調査は単年度分あるいは複数年度分が対象になりえますが、毎年必ずあるとは限りません。一般的には、税務当局により異なりますが、3年から5年経過すると税務調査可能時期が時効となるため、調査対象にならない年度もあります。調査の対象項目は多岐にわたり、取り上げられる項目も一定ではありません。


移転価格税制に対する準拠は、日本に関係会社を持つ在米日系企業にとっては、重要な法遵守の一項目となっています。移転価格とは、一般的には国際関係会社間の取引上で設定される価格設定のことです。第三者間取引よりも不当に低くまたは高く設定することにより、課税所得を上げたり下げたりすることが恣意的に可能となる価格設定のことです。つまり、米国法人税負担を低くすることもできるわけですが、IRSでは、税収の減少を防ぐため、恣意的な租税回避に目を光らせています。そのため、第三者間の取引と同等の価格を設定しているかどうかに関して、各法人の税務調査の際に検証し、万一不当な価格設定と認めた場合は、更正措置を行います。また、法人側では、毎年法人税申告書の提出までに、価格設定が妥当である旨、独自調査(Study)を行って文書化しておく必要があります。ただし、この調査も更正のリスクをなくすものではありません。また、違反には罰則規定もあります。そのため、最近ではIRSとの交渉により妥当な価格と利益率を事前に取り決めておく事前価格確認協定(Advance Pricing Agreement=APA)を締結する法人も増えてきました。


源泉徴収税(Withholding Tax)関連などは、直接法人税負担には結びつきませんが、法人が取り扱う重要な税務となります。法人が支払う費用の中には源泉徴収税の対象になる費用項目があり、税務当局に申告を行う必要があります。仮に、源泉徴収を行わない場合でも報告義務があるものもあり、正確な手順の理解が欠かせません。また、源泉徴収税の中でも、米国外の取引相手に支払う場合は、租税条約(Tax Treaty)が適用される場合もあり、該当する取引と租税条約との関連を理解する必要があります。


上記項目に関する詳細内容はアメリカ法人税実務マニュアル(米国法人税申告書の書き方)」をご参照ください。





タックスプロビジョン(Tax Provision)と財務諸表



タックス・プロビジョンの計算は、監査や税務に携わる会計士に限らず、企業会計担当者にも関心度の高い業務です。しかし、会計に精通した専門家でさえ、なかなかとっつきにくく、理解のための資料や教材の不足も否めません。そもそも、「プロビジョン」という言葉自体をご存じでない会計士の方々も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。


タックスプロビジョン(Tax Provision)とは、年度末財務諸表上で見込み法人税費用を引き当てることです。日本の財務諸表上でいう、法人税等調整額の部分として表示される部分も含んだ税額見積もり計算のことを言います。アメリカの連邦及び州法人税申告書の申告期日は、年度末より3ヶ月目の15日となっているところが多く、時間的に確定税額を得られないまま年度末財務諸表の監査となる場合も少なくありません。その際に、連邦及び州、ローカル法人税の見込み計上金額を見積もる目的で、申告書作成前の臨時的作業が必要となるのです。


タックスプロビジョンでは、当年度の税引当額を見積もると同時に、繰延計上分の税引当額も計算します。繰延分とは、税務上加減算計上で税務上一時差異(Temporary Difference)となり、次年度以降に戻入れされる分のことです。戻し入れのできない、永久差異(Permanent Difference)の部分ではありません。タックスプロビジョンの計算では、税効果会計上の繰延税金資産または負債と繰延税金費用または利得(Benefit)をそれぞれ計算し、当年度分の税額と共に財務諸表上に反映させます。計算はワークシート上で行われ、申告書または申告書作成システム上では行われません。金額は概算となりますが、後に作成されることになる申告書上の確定税額になるべく近い金額になるよう、ある程度正確に計算する必要があります。次に挙げられる各項目の計算を行います。


費用科目(Expense items)

1.当年度税金費用-法人税(連邦、州、ローカル) Current Corporate Income Tax Expense(Federal, State, Local)

2.繰延税金費用-法人税(連邦、州、ローカル) Deferred Corporate Income tax Expense(Federal, State, Local)


貸借対照表科目(Balance sheet items)

1.前払税金-法人税(連邦、州、ローカル) Prepaid Corporate Income Tax (Federal, State, Local)

2.未払税金-法人税(連邦、州、ローカル) Corporate Income Tax Payable (Federal, State, Local)

3.繰延税金資産(連邦、州、ローカル) Deferred Income tax Asset (Federal, State, Local)

4.繰延税金負債(連邦、州、ローカル) Deferred Income tax Liability (Federal, State, Local)


上記の繰延税金は、貸借対照表科目の期首及び期末の差異が繰り延べ税金費用(利得)となります。費用がマイナスとなった場合は利得(Benefit)となり、当期損益にプラスとなります。前払税金は予定納税で税金を納付するときに計上する科目で、年度が終わり、当年度税金費用が計上される申告書の期日(延長申請の期日)までに残高が調整されます。負債科目である未払税金と資産科目である前払税金を併用しても良いですが、前払税金科目だけで管理すると、科目残高の整理がしやすい面もあります。


税引当のために、準備しなければならないワークペーパーは次の8つとなります。

1.税引当仕訳 Tax Provision Journal Entries 

2.税引当要約-連邦及び州 Tax Provision Summary (FED & States) 

3.連邦及び州の課税所得計算表 FED & State Taxable Income Calculation Worksheet

4.連邦及び州の繰延税金 FED & State Deferred Taxes

5.実効税率計算表 Effective Tax Rate Calculation Worksheet

6.所得税変動表-ロールフォーワード表 Income Tax Movement Schedule (Roll-forward Schedule)

7.その他

8.サポート資料


上記項目1は計算されたタックス関連の科目残高を最終的に修正する仕訳で、すべての科目がバランスするようにします。項目2は、財務諸表上に示す必要があるときに要約としてまとめておくと便利なために準備されます。あくまでも、財務諸表関連に必要なワークペーパーとなります。項目3は、申告書作成時と同じく課税所得の計算を行います。できるだけ正確に計算して、申告書作成時に二度手間とならなないように心がけます。項目5の実効税率は、繰延税金計算用に、連邦及び州の税金が課税所得に対してどれだけの率となっているかを概略的に計算する率です。項目6は、前払税金、未払税金と当年度の税金の計算を連邦及び各州ごとに見られるようにするワークペーパーで、期首から期末への推移をわかりやすくしたものです。


タックスプロビジョンを行う際の計算シートの見本と手順及び理論に関する詳細は、「アメリカ法人税実務マニュアル(米国法人税申告書の書き方)」をご参照ください。また、本書「アメリカ法人税実務マニュアル 」の別冊として「アメリカ法人税実務マニュアル・別冊 – タックス・プロビジョン詳説」を準備致しております。タックス・プロビジョンの解説箇所を抽出し、お手頃な価格でのご提供です。作業手順をワークシートごとに詳解しておりますので、計算内容のご理解と共に、背景にある理論のご理解にも最適です。当別冊には、マイクロソフト・エクセル・ファイルで表計算シートも付録添付致しております。上でご説明した6種類のワークシートです。各々の表計算シートは連関してリンクでつながっており、計算式がマス目ごとに入っておりますので、実際の実務上での計算にもお役立ていただけます。業務遂行時に同 じパソコン画面上で解説と共に見ていただけるため、とても便利です。ご購入の詳細につきましては、当ウェブサイトの「アメリカ法人税実務マニュアル」ご購入案内の箇所をご参照ください。





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